ピルの種類と選び方
自費ピルと保険ピルの違いを徹底比較
「ピルを使ってみたいけれど、どれを選べばいいのかわからない」「自費と保険って何が違うの?」そんな疑問をお持ちの方は決して少なくありません。
ピルには大きく分けて「避妊用(自費)」と「治療用(保険)」の2種類があり、目的や症状によって選ぶべきタイプが異なります。
本記事では、女性の皆さまの不安をやわらげながら、わかりやすく丁寧に「ピルの種類と選び方」についてご説明します。
【第一部】ピルの2大分類を知っておきましょう
◆ 避妊用ピル(OC:Oral Contraceptives)【自費診療】
避妊を目的としたお薬で、健康保険は適用されず全額自己負担となりますが、副次的に以下のような効果も期待できます:
- 生理の移動
- 生理周期の安定化
- PMS(月経前症候群)の緩和
- ニキビ・多毛の改善
【当院で取り扱っている主な避妊用ピルと特徴】
| 薬剤名 | 世代 | 相性 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
|
トリキュラー |
第2世代 |
3相性 |
ホルモン量が3段階に変化し、自然なホルモン分泌パターンを再現。 |
|
マーベロン ファボワール |
第3世代 |
1相性 |
全ての実薬が同一ホルモン量で構成されており、男性ホルモン抑制効果が高いため、顎ニキビや周期的な大人ニキビに特に効果的。 |
|
スリンダ |
ミニピル |
1相性 |
エストロゲンを含まず、黄体ホルモン(ドロスピレノン)のみを含有。 |
【費用の目安】1ヶ月あたり:2,000〜4,000円(自費)
◆ 治療用ピル(LEP:Low dose Estrogen Progestin)【保険適用】
婦人科疾患の治療を目的とし、医師の診察によって診断名がついた場合に保険適用となります。
- 月経困難症(ひどい生理痛)
- 過多月経(出血量が多い)
- 子宮内膜症 など
【当院で処方可能な治療用ピル一覧表】
| 薬剤名 | タイプ | 主成分 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
|
ルナベルLD フリウェルLD |
低用量 |
エチニルエストラジオール0.035mg |
症状の強い月経困難症に効果的。不正出血が比較的少ない。 フリウェルはルナベルのジェネリック。費用が安価。 |
|
ルナベルULD フリウェルULD |
超低用量 |
エチニルエストラジオール0.020mg |
副作用が出やすい方に適し、体への負担が少ない。 フリウェルはルナベルのジェネリック。 |
|
ヤーズ ドロエチ |
超低用量 |
エチニルエストラジオール0.020mg |
PMS・PMDD(月経前不快気分障害)効果に優れる。むくみや肌荒れ改善。 ドロエチはヤーズのジェネリック。費用が安価。 |
|
ヤーズフレックス |
超低用量 |
エチニルエストラジオール0.020mg |
最大120日間連続服用可能。月経回数を年3〜4回に。 |
|
ジェミーナ |
超低用量 |
エチニルエストラジオール0.020mg |
最大77日間の連続服用で出血コントロール可能。 |
|
アリッサ |
新規 |
エステトロール15mg ドロスピレノン3mg |
天然型エストロゲン含有。血栓症リスク低減。従来のピルが使えなかった40〜50歳代にも対応。ジェネリック医薬品なし。2024年12月発売[1]。 |
【費用の目安】
- 先発品(アリッサ等):1,500〜3,500円/月(保険3割負担)
- ジェネリック:1,000〜1,500円/月(保険3割負担)
【第二部】自分に合ったピルの選び方
◆ 避妊用ピルが向いている方
- 確実な避妊を希望している
- ライフプランに合わせて妊娠を計画したい
- PMSや肌荒れが気になる
- 生理のスケジュール管理をしたい
自由度が高く、自分主体で選べるのが大きなメリットです。
◆ 治療用ピルが向いている方
- 生理痛がひどく生活に支障がある
- 経血量が多く貧血気味
- 子宮内膜症の診断がある
避妊効果もあり、治療とライフプランを両立できます。
◆ どちらか迷ったら...
花小金井レディースクリニックでは、医師が丁寧にお話を伺い、体調やご希望に応じた最適なピルをご提案しています。安心してご相談ください。
【第三部】40歳以上でも使用可能な新しいピルの選択肢
◆ スリンダ(避妊用ピル・自費)
スリンダは、エストロゲンを含まない日本初のミニピル(黄体ホルモン単剤)です[1]。避妊用ピル(自費)として分類されますが、従来のピルが使用できなかった方にも大きな選択肢となる革新的なピルです。
スリンダの血栓症リスク低減メカニズム
スリンダがエストロゲンを含まない「ミニピル」であることが、血栓症リスク低減の大きな特徴です。従来のピルに含まれるエストロゲンは、血液凝固線溶系に作用して血栓を溶かす機能(「線溶」)を低下させるため、年齢とともに血栓症のリスクが上昇します。特に40歳以上ではこのリスクが顕著に高まるため、日本産科婦人科学会などの産婦人科関連学会では40歳以上のピル内服を推奨していません[2]。
一方、スリンダはエストロゲンを含まないため、このような血液凝固系への悪影響を避けることができ、喫煙者・高血圧・肥満・脂質異常症・40歳以上の方にも安全に使用可能です[1]。
スリンダの主な特徴
| 特徴 | 詳細 |
|---|---|
|
血栓症リスク低減 |
エストロゲンを含まないため、従来のピルに比べて血栓症のリスクが極めて低い。喫煙者、高血圧、肥満、脂質異常症、40歳以上の方にも使用可能[1]。 |
|
高い避妊効果 |
パール指数0.39と報告されており、臨床試験では100人の女性が1年間スリンダを使用した場合、妊娠するのは約0.4人程度の高い避妊効果[1]。 |
|
エストロゲン由来の副作用が少ない |
吐き気、乳房の張り、血栓症などのエストロゲン由来の副作用が起こりにくい。 |
|
PMS改善・生理痛緩和 |
排卵抑制作用により、PMS症状や生理痛が緩和される可能性が高い[1]。 |
|
閉経まで服用可能 |
エストロゲンを含まないため、基本的に閉経まで長期服用が可能[1]。 |
|
適応対象が広い |
従来のピルが禁忌だった喫煙者、高血圧患者、肥満、脂質異常症、血栓症リスク者など幅広い患者に対応[1]。 |
|
主な副作用 |
不正出血(約90%):服用初期に起こりやすいが、3ヶ月程度継続すると減少傾向。その他、下腹部痛、頭痛、乳房不快感、吐き気、ざ瘡など[1]。 |
◆ アリッサ(治療用ピル・保険適用)
アリッサは2024年12月に発売された、月経困難症の治療用ピルです[1]。従来のピル(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬:LEP)が含む合成型エストロゲン「エチニルエストラジオール」に代わり、天然型エストロゲン「エステトロール(E4)」を含有する新しいタイプのピルです[1]。
黄体ホルモン成分には、他のLEP配合剤と同じ「ドロスピレノン」を使用しており、ジェネリック医薬品はまだ販売されていません[1]。
従来のピルとアリッサの大きな違い:血栓症リスク
従来のピル(エチニルエストラジオール含有)での血栓症リスク
従来のピルに含まれるエチニルエストラジオールは、血液凝固線溶系に作用して、血栓を溶かす機能(「線溶」)を低下させます[2]。このため、年齢とともに血栓症のリスクが上昇します。
特に40歳以上では血栓症の発症リスクが高くなるとされており、日本産科婦人科学会などの産婦人科関連学会では、40歳以上のピル内服を推奨していません[2]。
アリッサの血栓症低減の特徴
アリッサに含まれるエステトロール(E4)は、従来のエチニルエストラジオールと異なる特徴を持ちます[1][2]:
- 血管内皮細胞や肝臓に作用しない:
エステトロールは血管や肝臓のエストロゲン受容体に作用しないと考えられており、従来のエストロゲンのように血液凝固系に悪影響を与えません[3] - 「線溶」機能の低下を抑制:
従来のエチニルエストラジオールが低下させる線溶機能について、エステトロールはこの低下を抑えられることが報告されています[2] - SHBG誘導作用が弱い:
血栓症リスクの指標とされるSHBG(性ホルモン結合グロブリン)の発現を誘導しません[1]
結果として、エステトロール含有のアリッサは、従来のエチニルエストラジオール含有ピルよりも血栓症リスクが低減される可能性が示唆されています[1][2][3]。
50歳までの内服が可能
富士製薬(製造販売メーカー)は、アリッサについて、血栓症リスクが従来のピルより低いため、50歳までの内服は問題ないと考えています[4]。これにより、従来のピルが使用できない40歳以上の女性にも新たな治療選択肢が提供されました。
※ただし、個別の健康状態や危険因子(喫煙、高血圧など)の有無について、医師の判断が必要です。
アリッサの主な特徴
| 特徴 | 詳細 |
|---|---|
|
天然型エストロゲン |
ヒト胎児肝臓で生成される天然型エストロゲン「エステトロール(E4)」を含有。妊娠中の母体や胎児にも存在するホルモンです[1]。 |
|
血栓症リスク低減 |
従来のピルより血栓症リスクが低い可能性が報告されており、従来のピルが使えなかった40〜50歳代の方にも選択肢となります[1][2]。 |
|
肝機能異常リスク低減 |
エステトロールは血管・肝臓に対する影響が少ないため、肝機能異常のリスクも低いと考えられています[1]。 |
|
PMS改善効果 |
黄体ホルモン成分「ドロスピレノン」により、PMS・PMDD(月経前不快気分障害)の緩和、むくみや肌荒れの改善に効果的[1]。 |
|
体重変化が少ない |
1年間の臨床試験で、服用による体重増加はほとんど認められませんでした[1]。 |
|
月経困難症治療 |
月経困難症の治療に保険適用される医薬品です。ジェネリック医薬品はまだ販売されていません[1]。 |
【よくある質問Q&A】
Q1. ピルは血栓症のリスクがありますか?
エストロゲンを含むピルでは血栓症リスクがわずかに上昇します。初期症状は「ACHES(エイクス)」と呼ばれ、以下のような症状に注意が必要です:
- ふくらはぎの痛みや腫れ、熱感、しこり
- 激しい頭痛や胸痛、息切れ、視覚障害、めまい
- 舌のもつれ・しゃべりにくい
これらが現れた場合は直ちに服用を中止し、循環器内科を受診してください。
スリンダやアリッサなど、エストロゲンを含まないまたは血栓リスクが低い製品では、リスクが大きく軽減されます[1]。
Q2. 40歳以上でもピルは飲める?
従来のエチニルエストラジオール含有ピルは、40歳以上で血栓症リスクが著しく上昇するため、日本産科婦人科学会も40歳以上の使用を推奨していません。特に喫煙者は大きなリスクを抱えます。
新しい選択肢:スリンダとアリッサ
スリンダ(避妊用ピル・自費)- 年齢と喫煙による制限がない
スリンダはエストロゲンを含まないため、以下の方に最適です[1]:
- 40歳以上の女性:従来のピルが使用できない年代でも、安全に使用可能
- 喫煙者:35歳以上の喫煙者も使用可能。エストロゲンがないため血栓症リスク増加なし[1]
- 高血圧・肥満・脂質異常症がある方:従来のピルが禁忌だった条件下でも使用可能[1]
- 40歳代後半~50歳代:閉経に至るまで長期使用が可能。年齢上限規定なし[1]
使用開始・制限について:初経発来後から使用可能ですが、骨成長が終了していない若年者は慎重投与です。
アリッサ(治療用ピル・保険適用)- 保険適用だが喫煙制限あり
アリッサは天然型エストロゲンを含有するため、従来のピルより血栓症リスクが低減されていますが、引き続き年齢と喫煙に関する制限があります[1][2]:
- 40歳以上:「慎重投与」と位置づけられており、医師の十分な評価が必要。50歳までの内服は医学的には可能と考えられています[4]。
- 35歳以上で1日15本以上の喫煙者:禁忌(投与不可)です[1]。これは添付文書に明記された重要な制限で、スリンダとは大きく異なります。
- 月経困難症治療に保険適用:自費診療のスリンダと異なり、診断がつけば保険が利く利点があります[1]。
使用開始・制限について:初経発来後から使用可能ですが、骨成長が終了していない若年者は慎重投与です。
スリンダとアリッサの使い分け
| 項目 | スリンダ | アリッサ |
|---|---|---|
|
喫煙者(35歳以上) |
✓ 使用可能 |
✗ 1日15本以上は禁忌 |
|
40歳以上 |
✓ 使用可能(上限規定なし) |
△ 慎重投与(50歳まで) |
|
保険適用 |
✗ 自費(月2,000~4,000円) |
✓ 月経困難症で保険適用(月1,000~3,500円) |
|
適応診断 |
避妊目的 |
月経困難症の診断が必要 |
医師の判断が重要:喫煙者、高血圧、その他心血管系リスク因子がある場合は、必ず医師に相談し、自分に合ったピルを選択してください。
Q3. ピルを飲み忘れた場合はどうすれば?
- 飲み忘れた日数に応じて対応が異なります:
- 1日:気づいた時点で1錠服用し、その日の通常の時間にも1錠(計2錠)服用可。
- 2日:直近の1錠を服用し、翌日から通常通り継続。
- 3日以上:服用を中止し出血を待って新シートで再開。再開後7日間は他の避妊法を併用してください。
休薬期間を含めて8日以上空くと避妊効果が低下するため注意が必要です。
Q4. 不正出血がありますが大丈夫ですか?
- ピルの使用初期にはよくある症状で、2〜3ヶ月で自然に改善することが多いです。
以下のような場合は婦人科受診をおすすめします:
- 3ヶ月以上続く
- 出血量が多い、下腹部痛やおりものの変化がある
- 2週間以上続く
- 子宮頸がん・体がん検診を1年以上受けていない
- 閉経後の出血
Q5. いつ受診すべきですか?
初めてピルを使う方、副作用が気になる方は早めにご相談ください。当院では医師が丁寧に対応し、安心して治療を進められるようサポートいたします。
まとめ
ピルは避妊や治療だけでなく、女性のライフスタイルやQOL(生活の質)にも深く関わる大切な選択肢です。
自分に合ったピルを選ぶことは、今の体調だけでなく、将来の計画にもつながります。
従来のピルが使用できなかった方への新しい選択肢
特に40歳以上の女性や、従来のピルで副作用が強かった方、喫煙者、高血圧や肥満がある方には、次のような新しい選択肢が注目されています[1][4]:
- スリンダ(避妊用ピル・自費):エストロゲンを含まないため血栓症リスクが極めて低く、閉経まで長期服用が可能。不正出血が起こりやすい点を除けば、従来のピルが使用できなかった多くの患者さんに適しています[1]。
- アリッサ(治療用ピル・保険適用):天然型エストロゲンを含有し、血栓症リスクが従来のピルより低減。月経困難症の治療が必要な40〜50歳代の女性に、保険適用での治療が可能になりました[1][4]。
これらのピルは、従来のピルが使用できなかった方にも、安全で有効な治療・避妊手段を提供し、女性の健康とQOLの向上に大きく貢献しています。
花小金井レディースクリニックでは、ひとりひとりに寄り添いながら、最適なピルの選択をサポートし、安心して治療・避妊を進められるようサポートいたします。
References
- [1] (2024). 月経困難症治療剤アリッサ®配合錠(FSN-013)の薬価基準収載のお知らせ.
- [2] 松本仁子, 他. (2024). 新しい月経困難症治療薬「アリッサ配合錠」について. LC-SACRA産婦人科クリニック.
- [3] 医薬品医療機器総合機構. (2024). アリッサ配合錠_富士製薬工業株式会社_審査報告書.
- [4] アリッサ配合錠 患者さん向け情報サイト. Q&A セクション. 富士製薬工業株式会社.
- [5] 日本産科婦人科学会・日本女性医学学会. (2020). OC・LEPガイドライン2020年度版. 日本産科婦人科学会.




